メタボリックシンドローム
病態と診断基準
内臓脂肪蓄積は、メタボリックシンドロームの主要な役割を担っており、診断基準でも必須項目となっています。メタボリックシンドロームの病態は、内臓脂肪から様々な生理活性物質【図2】が分泌されることによるのであり、そのアディポサイトカインの分泌異常により心血管病のハイリスク状態となる。脂肪細胞から分泌される「遊離脂肪酸」(FFA)は門脈から肝臓に流入してリポ蛋白合成を盛んにし、高脂血症や肝臓の脂肪蓄積を起こし、筋肉でのインスリン抵抗性を増大するが、その他にも種々のサイトカインが分泌される。「TNFα」はインスリンの働きを悪くし、「アンジオテンシノーゲン」は高血圧に関係し、「PAI-1」は易血栓性状態をもたらすが、これらは悪玉のアディポサイトカインと呼ばれています。一方、内臓脂肪が貯まると「アディポネクチン」の分泌が低下して、糖尿病、高血圧、動脈硬化が起こりやすくなる。このアディポネクチンは善玉のアディポサイトカインと言われています。

脂肪細胞はエネルギーを貯めて燃やすためにあるのに、運動不足で燃えることが出来ない。だから脂肪細胞から出てくるアディポサイトカインの分泌異常が起こってしまう。MSは、現代社会に発症する生活習慣病の根幹をなすもので、その中心に内臓脂肪の蓄積があるのです。
肥満
日本人は、軽度の肥満が多い割には肥満に伴う疾患(高血圧や高中性脂肪血症など)の合併率が高いという民族的特徴があり、日本人独自の肥満症の診断基準が発表されている。肥満とは、脂肪組織の過剰な蓄積状態と定義され、体格指数BMI(body mass index)で肥満を判定する。
BMI=体重kg÷身長(m)の2乗
例えば 身長165cm、体重70kgでは BMI=70÷(1.65×1.65)=25.71
身長165cmでの理想体重(BMI=22)は 22×(1.65×1.65)=59.895kgとなる。
日本肥満学会では、健康障害の少ないBMIを22と定め、これを理想体重(標準体重)としている【図3】。WHOの肥満判定はBMI30以上であるが、日本ではBMI25以上を肥満と診断している。

肥満に伴う健康障害としては、(1)2型糖尿病、耐糖能障害、(2)脂質代謝異常、(3)高血圧、(4)高尿酸血症・痛風、(5)冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)、(6)睡眠時無呼吸症候群、(7)脂肪肝、(8)整形外科的疾患(変形性関節症・腰痛症)、(9)月経異常、などがある。
健康障害を合併しやすいハイリスク肥満として、内臓脂肪型肥満が注目されるようになり、内臓脂肪蓄積量を客観的に評価するために腹部CT検査を施行して健康障害の合併(高血糖、高脂血症、高血圧)との関係を調べると、内臓脂肪面積が100cm2を超えると性別に関係なく危険因子が2倍以上に跳ね上がることから、この100cm2以上の値が内臓脂肪蓄積の基準として用いられるようになった【図4】。こんどは、内臓脂肪面積とウエスト周囲径との相関を調べると、100cm2に相当するのは、ウエスト径が男性は85㎝、女性は90㎝という値が得られ、これが内臓脂肪型肥満の指標となった【図5】。このウエスト径は臍周囲径であり、リラックスして呼気時に測定する。女性が90cmとなっているのは、皮下脂肪が多いからである。


高脂血症
血液中の総コレステロール値と冠動脈疾患の危険率との関係を調査した報告をみると、総コレステロール値が140mg/dlを超えると徐々に上昇し、220以上でカーブは急に上昇する。総コレステロール220mg/dlでリスクは1.5倍、250mg/dlでは2倍となっている【図6】。

(a)高脂血症の診断基準(空腹時採血にて)
高コレステロール TC ≧ 220mg/dl
高LDLコレステロール LDL ≧ 140mg/dl LDL=TC-HDL—(TG÷5)
低HDLコレステロール HDL < 40mg/dl
高トリグリセライド TG ≧ 150mg/dl
(b) 動脈硬化性疾患の冠危険因子の評価と管理目標(2002年)
患者カテゴリーを冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)がないA、B群と、冠動脈疾患がすでにあるC群に分け、Bを危険因子の数によってB1,B2,B3,B4に分ける【表3】。糖尿病があれば危険因子がなくてもB3扱いとなり、脳梗塞・閉塞性動脈硬化症の合併はB4扱いとなって、それぞれの群でのLDL-C値の管理目標値が設定され、HDL-CとTG値はいずれの群も≧40、<150と設定されている。原則としてLDL-C値で評価し、TC値は参考値とする。
LDL-C以外の冠危険因子とは、(1)加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)、(2)高血圧、(3)糖尿病・耐糖能異常、(4)喫煙、(5)冠動脈疾患の家族歴、(6)低HDL-C血症(40mg/dl未満)である。
