なぜ、高血圧を治療するの?
診察室でのやり取り
- Aさん
健診で血圧が140あり、高血圧と言われましたが・・・
- 医 師
いまの最新のガイドライン(2019年版)では正常血圧は130/80未満で、140/90以上は高血圧と診断され治療が必要です。アメリカでは120/80未満に下げるように言われていますよ。
- Aさん
以前は130〜140は「正常高値」血圧と言われていましたが。
- 医 師
2019年の改定では、正常ではなく「高値血圧」と呼称が変わり、正常ではない扱いとなりました。130未満に下げる必要があります。
- Aさん
なぜ正常範囲が変わったのですか?
- 医 師
多くの疫学データから血圧が120を超えると、血圧が130台でも脳梗塞などの血管疾患が増加していくことが分かり、折角、治療するなら合併症をきたさない血圧に管理するよう治療強化が求められているのです。
- Aさん
健診で血圧が140あり、高血圧と言われましたが・・・
- 医 師
いまの最新のガイドライン(2019年版)では正常血圧は130/80未満で、140/90以上は高血圧と診断され治療が必要です。アメリカでは120/80未満に下げるように言われていますよ。
- Aさん
以前は130〜140は「正常高値」血圧と言われていましたが。
- 医 師
2019年の改定では、正常ではなく「高値血圧」と呼称が変わり、正常ではない扱いとなりました。130未満に下げる必要があります。
- Aさん
なぜ正常範囲が変わったのですか?
- 医 師
多くの疫学データから血圧が120を超えると、血圧が130台でも脳梗塞などの血管疾患が増加していくことが分かり、折角、治療するなら合併症をきたさない血圧に管理するよう治療強化が求められているのです。
高血圧の治療にはさまざまな問題があります。まず、
①高血圧はどうして治療が必要なのか?
②血圧をどこまで下げるのか(降圧目標値はいくつか)?
③いつまで降圧薬を飲まなければいけないのか?
このような疑問をもったまま治療を受けている方が多いのは、医師の説明不足にも原因があります。
治療を開始しても、降圧目標値の130未満に達しないと
- 医 師
血圧をもう少し下げる必要があるので、薬を1種類増やしましょう。
- Aさん
130台ならこのままで、薬を増やしたくないです(患者さんが要因のイナーシャ)。
- 医 師
(説得して増やすのも面倒だな・・・)それならいつも通りにしておきます
(医師が原因のイナーシャ)。
今、治療の現場では高血圧治療を巡って問題になっていることがあります。それは、【臨床的惰性(クリニカル・イナーシャ)】と呼ばれています。
医師とAさんとのやり取りには2つの問題点が含まれています。医師が「薬を増やしましょう」というのは正しい判断ですが、Aさんが増やすのを嫌がるのなら「説得するのも時間がかかるし、処方を変えないでおこう」というのは、医師側のクリニカル・イナーシャです。Aさんが「薬を増やさないでほしい」というのは患者側のクリニカル・イナーシャで、この問題は双方に原因があることが多いのです。
「イナーシャ」とは物理学用語で慣性とか惰性のことです。「変えないほうが良い、変えるのは面倒」という考え方は、何のために治療しているのかを忘れた対応です。言葉を変えると、心理学用語では【現状維持バイアス】と呼んでいますが、このままで済ますという間違った判断になります。
高血圧の治療薬
有効な降圧薬が現れたのは1970年代のACE阻害薬からで、1980年にカルシウム拮抗薬(CCB)、1990年にはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)と次々と新薬が登場し、降圧薬で治療した効果がエビデンスとして蓄積され、EBM(根拠に基づく医療)が治療方針を決める判断根拠となりました。治療が可能となったことで治療の目標値が設定され、治療薬と治療目標を定めたガイドラインが作成されるようになったのです。
2019年の高血圧治療ガイドラインでは「クリニカル・イナーシャ」を取り上げています。降圧目標に達していない状況を放置して、同じ投薬を続けるやり方を「臨床的な惰性」として注意を促しています。降圧薬を増量したり他剤を組み合わせて降圧目標値まで血圧を下げるように注意を促しています。そうしなければ治療している意味がないからです。
薬の増量や種類を増やすことには、患者さんの抵抗もあり、医師も惰性で以前のままの処方を続けることで満足してしまう。これが問題です。折角、治療薬が発達して治療法があるのに、治療が改善されていない現状は、【高血圧パラドックス】とも呼ばれています。
SPRINT研究の衝撃
2015年にアメリカでSPRINT研究の結果が発表されました。血圧を140未満にするより、120未満にした方が心血管事故は25%も低下することが分かりました。この結果の影響を受けて2019年の日本高血圧学会では、高血圧基準は従来通り140以上ですが、治療目標値を130未満することになりました。また、充分に治療目標値を達成するためにクリニカル・イナーシャの問題を取り上げています。
愛知県内科医会 安藤 忠夫
血圧が120を超えると脳梗塞などの血管疾患が増加します。
「いつもの薬で・・」と惰性で薬を飲まず、その都度医師と相談し正しく服薬しましょう。

