健診を受けて肝機能障害(ALTやASTの上昇)、あるいは腹部超音波検査で脂肪肝を指摘される方が多くなっています。どうしたらいいのでしょうか。肝機能に異常があると、ウイルス肝炎、脂肪肝、飲酒者、薬剤性肝障害などの疑いがあり、その鑑別診断が必要となります。また、脂肪肝は、外見上の肥満がなくても内臓脂肪のたまった「隠れ肥満」でも同様の異常所見が認められることがあります。
奈良宣言~2023年6月日本肝臓学会
肝臓は沈黙の臓器と言われており、肝臓疾患の早期発見を国民に呼びかけるために『奈良宣言』が発表されました。「ALT(GPT)が30 U/Lを超える場合は異常あり」として、「慢性肝臓病(CLD)を予防するために」、かかりつけ医を受診するように呼び掛けています。
ALT値の30超えは、健康成人の約15% に認められると報告されています。この肝機能障害は、肝臓に線維化を伴う脂肪肝の初期の可能性もあり、生活習慣を改善して、内臓脂肪を減らす必要があります。
(第59回日本肝臓病学会リーフレット)
肝臓の線維化リスク
では、肥満・糖尿病・脂質異常・高血圧に合併する「脂肪肝」が進むとどうなるでしょうか。肝細胞が脂肪を処理しきれず、脂肪が沈着すると、肝組織に慢性炎症が起こって炎症細胞が浸潤します。その結果、肝組織の線維化(Fibrosis)が起こって、線維化の段階(ステージ)はF0(異常なし)からF1~2(軽度線維化)、F3(進行期の線維化)、F4(肝硬変)へと悪化していきます。この線維化が進行すると肝細胞癌が現れることがあります。
したがって、血液検査でALTの上昇が見付かったら、血液検査による線維化マーカー検査のほかに、肝臓の「線維化リスク」を知っておく必要があり、計算式でステージを推定する方法があります。
線維化リスクの算出式
算出式は、FIB-4 index =(年齢 × AST値) / (血小板数 × √ALT値)
ですが、算定に必要な項目は、「年齢、AST、ALT、血小板数」の4つです。ネットの「FIB-4 index計算サイト」に数値を入れればすぐに算出されます。Fib4 indexが 1.3未満は線維化リスクが低いので、1〜2年ごとに血液検査で経過をみます。Fib4 indexが1.3以上2.66まではリスクが中等度、Fib4 indexが2.67以上は線維化の高リスク群で肝硬変が疑われ、精密検査が必要となります。
脂肪肝
脂肪肝は、アルコールが原因となる「アルコール性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪肝」とがあります。ただし、アルコール量が男性で30g/日未満(日本酒1.5合未満)、女性で20g/日未満の場合は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と定義されています。肝臓に線維化を認めるものはNASH(nonalcoholic steatohepatitis=非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれています。この他にも様々な原因による二次性脂肪肝があります。
我が国の検診でNAFLDを呈する頻度は、男性では40歳代で約40%、女性では閉経後の60歳代で30%以上、その後は男性とほぼ同等の頻度となります。2016年の時点で、我が国のNAFLD患者は約2000万人、そのうちの十数%がNASH患者で約300万人となっています。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
NAFLD/NASHは、欧米では2023年6月に定義が変更されてMASLD/MASHと呼ばれています。2024年、日本でも呼称が変更されました。
脂肪肝のうち代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、慢性肝臓病の一般的な原因となり、肝臓でのVLDL脂質代謝が障害されます。その代謝機能障害をきたす、①肥満(体格指数上昇)、②高血糖、③高中性脂肪血症、④HDL低値、⑤高血圧などの心血管代謝基準5項目のうち少なくとも1項目が含まれる場合に代謝機能障害関連脂肪性肝疾患と診断されます。この状態では、VLDL分泌が障害され、インスリン抵抗性から肝細胞に中性脂肪の脂肪滴が貯留して脂肪肝となり、慢性炎症が起こり、線維化が進みます。また、MASLD では、5つの心血管代謝基準の項目数が多いほど、心血管イベントが増加することも分かっています。
NAFLD (MASLD)の予後
100名のNAFLDの患者が20年経過すると、5名が肝硬変になり、それから5~10年経過すると2〜3名が非代償性肝硬変になり、さらに数年経過すると1〜2名は肝移植が必要な状態になると言われています。しかし、ALTの改善や病態の改善があれば、病状が直線的に進行するわけではありません。
GPTが30 U/Lを超えていたら、慢性肝臓病(CLD)を予防するために、かかりつけ医を受診しましょう。
愛知県内科医会 安藤 忠夫

